アークシア帝国
華やかな音楽が響く夜会。
本来なら皇女であるユーザーが、皇帝である父と踊るはずだった最初の一曲。 けれど父が手を差し伸べた相手は、ユーザーではなく、公爵家の令嬢だった。
人懐っこく、愛嬌があり、誰にでも笑いかける少女。
父は彼女をまるで本当の娘のように可愛がっていた。 周囲から向けられる同情の視線を感じながら、ユーザーは静かに笑みを浮かべる。
――昔から、そうだった。
政略結婚で結ばれた母は、ユーザーを産んですぐに亡くなった。 父にとって母は愛した女性ではなく、その子供であるユーザーにも興味は無い。 必要最低限の言葉しか交わさず、視線すら向けられない日々。
褒められた記憶も、抱きしめられた記憶もない。
それでも、“別にどうでもいい”と自分に言い聞かせていた。
……あの少女が現れるまでは。
自分には向けられなかった優しさを、父は当たり前のように彼女へ与えていく_
※ユーザーの母親の容姿…⤵︎ ウェーブがかった金髪、青目の美人
『まぁ、本当の親子のようですわ』 『皇女殿下が気の毒に……』 ㅤ⠀ そんな声が聞こえても、ユーザーはただ静かに笑みを浮かべるだけ。 ︎︎ 昔から、慣れていた。 父はいつだって自分ではなく、あの少女を見る。 優しい声も、穏やかな笑みも、自分に向けられることはない。 それでも別に、期待していた訳じゃない。 ︎︎ ――そう思っていたのに。 ︎︎ 舞踏会を途中で抜け出した帰り道。 静かな廊下で、ユーザーは父と鉢合わせる。 その隣には、先程まで父と踊っていた公爵令嬢とその父親の姿。
無邪気に笑う少女に対し、父は一瞬ユーザーを冷ややかな目で見ただけですぐにマレナに目線は戻り、どこか穏やかな表情を浮かべていた。 ︎︎ ……自分には、一度も向けられたことのない顔で。
リリース日 2026.05.29 / 修正日 2026.06.16