正邪大戦が始まって三年。
最初に剣を抜いた時、誰も戦争がこれほど長引くとは思っていなかった。
正派は一つにまとまった。
九派一幇と五大世家を中心に、数多くの門派が旗を掲げた。 各地の武館や鏢局、名もなき侠客たちまで合流した。 民衆は正義が必ず勝利すると信じていた。数百年の間、江湖を守ってきた正派の基盤は固く、人材は絶えなかった。 血教は勢力こそ巨大だが、結局は邪道の群れに過ぎないという認識が強かった。
戦争序盤は、その信念を証明するかのように見えた。
正派は素早く北方の拠点を回復し、血教の支部をいくつも壊滅させた。 名の知れた長老たちが次々と命を落とし、各地に潜んでいた血教徒たちは逃げ惑うのに必死だった。 数多くの戦闘で、正派の旗が最も高い場所に掲げられた。
人々は長くはかからないだろうと言った。
半年。
長くても一年。
血教は間もなく歴史の闇に消えるだろうと考えられていた。
しかし、血教は崩れなかった。
敗北を重ねながらも組織は散り散りにならなかった。失った拠点は捨て、生き残った兵力は別の場所へ移動した。 正面から押されれば側面を突き、昼に敗れれば夜に取り返した。 戦線は絶えず揺れ動いた。
何より、兵力が減らなかった。
戦闘が終わるたびに、血教の数はむしろ増えていった。
最初は流れの邪派武人たちが合流したのだと思われていた。
だが時間が経つにつれ、それだけでは説明がつかなくなった。
ある村が陥落すると、数日後にはそこから血教の軍勢が現れた。 滅門した門派の武人たちが敵の側に立つこともあった。 名を失った流浪の民たちは、食べ物と寝床を得るために血教の旗の下に集まった。 飢えは信念よりも強く、生き残るために剣を取る者は日に日に増えていった。
正派は勝利を収めても兵力を失った。
血教は敗北を喫しても再び補充した。
その差が少しずつ戦況を変え始めた。
一年目が終わる頃。
正派は依然として優勢だった。
しかし、もはや圧倒的ではなかった。
占領した城は再び奪われ、確保した要所には血教の伏兵が現れた。 補給隊が襲撃されることも頻繁になった。勝戦の報告よりも支援要請が多くなり、援軍は常に不足していた。
二年目に入ると、状況はさらに悪化した。
血教は正面衝突を避けなかった。
むしろ大軍を動かした。
一度の戦闘で数千人が倒れても、翌月にはまた別の軍勢が姿を現した。 長老の一人が死ねば、別の長老がその座を継いだ。 指揮官が倒れても陣形は崩れなかった。
まるで首を切り落としても再生する獣のようだった。
対照的に、正派は人を失うほどにその穴が大きく感じられた。
十年の修練を積んだ弟子一人を育てるには、長い時間が必要だった。
門派の長老は一朝一夕に作られるものではなかった。
一人が死ねば、その穴を埋める者がいなかった。
勝利を収めたとしても被害は残った。
その被害は次の戦闘でそのまま弱点となった。
門派たちは次第に疲弊していった。
掌門人たちは自ら前線へ赴き、後起之秀たちまで剣を取った。 閉関修行中だった老高僧や古強者たちまでもが門を開いた。最後の力を振り絞る戦いが続いた。
しかし、血教は止まらなかった。
戦いが休まることはなかった。
東で戦闘が終われば、西で火の手が上がった。
北で勝戦の報が聞こえれば、南で城が一つ陥落した。
どこも安全ではなかった。
江湖全体が一つの戦場となった。
民衆が真っ先に崩れ去った。
田畑は捨てられた。
商団は道を見失った。
市場は門を閉じ、客桟は避難民で溢れかえった。
子供たちは剣戟の音を聞きながら育ち、親たちは明日を約束できなかった。
死体を埋葬する人間さえ不足する場所が増えた。
川は血の色に染まり、野原にはカラスの群れが去ることはなかった。
三年目。
戦況は完全に逆転した。
正派はもはや攻撃できなかった。
守るだけで精一杯だった。
門派ごとに防衛線を構築し、山門は固く閉じられた。 支援兵力を送る余裕がなく、互いの救援要請さえ見捨てる事態が起きた。
血教は違った。
赤い旗は日に日に増えていった。
かつて隠れ住んでいた教徒たちは白昼堂々と街を闊歩し、血教の軍勢は城門の前まで進出した。彼らが通り過ぎた跡には赤い旗が立てられ、ほどなくしてそこは血教の領土となった。
江湖の半分が赤く染まった。
人々はもはや、誰が正義かなど語らなかった。
誰が生き残るかだけを話した。
正派の名はまだ健在だった。
九派一幇は残っており、五大世家も持ちこたえていた。
しかし、彼らの影響力は以前のようではなかった。
世界を守っていた巨大な柱には亀裂が入り、その隙間は日増しに広がっていった。
対照的に、血教の威勢は天を突いた。
人々は恐怖の中でその名を口にした。
ある者は服従し、ある者は逃げ出した。
ある者は生き残るために血教の旗の下で膝を屈した。
そして、誰もが一人の男の名を思い浮かべた。
血魔。
彼が戦場に姿を現してから、戦争は以前とは異なる様相を見せ始めた。
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武侠境界体系
武侠の境界用語体系である。ナムウィキを参考にし、最高境界は生死境まで設定した。
武侠世界観用
武侠世界観を使用する際に用いるロアブックである。
武侠小説の武功
門派ごとの簡単な武功のまとめ
キョンシー
設定矛盾防止用

四川の戦場は、とっくに生を捨てた地だった。
血の滲んだ土は黒く固まり、 折れた兵装と死体が果てしなく転がっていた。 風が吹くたびに、腐敗臭が土埃と共に舞い上がった。
その間をキョンシーたちが守っていた。
数は数えきれなかった。
古びた甲冑を纏った者もいれば、 僧侶の長衫を羽織った者もいた。 軍服の破れた兵卒も見え、 顔が半分ほど崩れた武人も混ざっていた。 死んだ時期は異なっていたが、動きには一つの共通点があった。
皆、同じ任務を抱いていた。
誰かから命を受け、 まだ終わっていないと言わんばかりに戦場をうかがっていた。
首を回して四方を確認する奴がいれば、耳を澄ますように立ち止まる奴もいた。 二人、三人で視線を交わしながら場所を入れ替える姿も見えた。 特に言葉はなかった。 それでも、互いの意思が通じていないようには見えなかった。
彼らは待っていた。
*何かを。

その時だった。
遠くから足音が聞こえた。
ゆっくりと。
一定の間隔だった。
キョンシーの一人が先に顔を上げた。
すぐに隣にいたキョンシーも同じ方向を見つめた。 その動きは瞬く間に伝播した。 数百の視線が一箇所に集まった。
戦場が静まり返った。
誰も先には動かなかった。
近づいてくる存在を確認しようとするかのように、皆がその場に立ち尽くした。
しばらくして、赤い衣の裾が視界の端に現れた。
男は止まらなかった。
歩みは遅かった。
周囲を見渡すこともしなかった。
血を踏み、折れた槍を通り過ぎ、死体の間を縫って前へと進んだ。
キョンシーたちは彼を見つめた。
血の気のない顔には感情がなかった。
しかし、瞳は揺れていた。
生きていた頃の本能ではなく、死んだ後も残った警戒心だった。
数人は手を武器へと伸ばした。
数人は足先に力を込めた。
だが、誰も先には動かなかった。
男は歩き続けた。
距離は少しずつ縮まった。
前列にいた者たちが一歩ずつ退くと、後ろにいたキョンシーたちもそのまま道を空けた。
赤い長袍がその間をかすめた。
血魔、チョン・ジュハンは、あたかも目の前の存在たちが障害物ではないかのように歩みを続けた。
ただ沈黙の中で、彼の後ろ姿を見守った。
戦場を支配していたのは死ではなかった。
数百のキョンシーが同時に抱いた緊張だった。
*そして、その緊張のど真ん中を、血魔が何食わぬ顔で通り過ぎていた。
リリース日 2026.09.03 / 修正日 2026.09.11