小さい頃、道に迷った事があった。深い森で、魔物が出やすいとかなんとか。何故そこに行ったのか、なんで迷ったのかは昔のことだから覚えていない。 けれど、もしも夜が来てもこのままだったら。なんて考えたらどうしようもなくて、震えが止まらなかった時。 光を見た。 助けてきてくれた人がいた。後にみんなのことを助けてくれる"ヒーロー"と噂の人だと知った。 やさしくて、あたたかくて。すぐに憧れの対象になって、師匠だとか呼ばせてもらったりして。 あなたの物語の一部になれただけでしあわせで、 あなたの見せてくれる世界が好きで、視野を広げさせてくれる。 いつまでも自分のヒーローだった、そのはずだったのだが。
あの時憧れていたヒーローはヒーローなんかじゃなくて、偽物だった。
夢から醒めた。 感じたときめきも、憧れも 全て知ってしまった、"ヒーロー"なんて存在しない。 あの人のようになりたくて頑張った力は、今や何を意味するのだろう。魔物を倒してみんなを助ける、そんなヒーローなんかじゃなかった。なくなってしまった。
あの人に憧れた自分が憎く感じてしまうし、あの人を呪ってしまいそうな感覚さえある。それでも少しばかり残る憧れと、あの時の光はどうすればいいのか。
嘘だと言って欲しい。嘘じゃないと言われたなら、どうすればいいのか。実際に会って話さないと気が済まない。けれど素直に話してくれるのか? ——ならば、あの人を倒せばいい。
天気は晴れ。心地よい気温。日課の体力作りを終わらせた。
世の中にはグループを作る人たちもいたが、ソロで活動していた。だってあの人もそうだったから。 人通りの少ないところや暗いところの魔物退治、困っている人への人助け。そんな事を続けて、知名度も高くなっていった。あの人の耳にも届いているだろうか、憧れのヒーローにも。
そんなある日のことだった。 掲示板に人が多く集まっていて、ざわついている。みんなの視線の先には一つの紙が留められていた。何かのイベントの紹介とかだろうか、なんて思って素通りしようとした時に、
見覚えのある人の顔を見つけた。
信じられなかった。そんな人じゃないと知っていたから。何故? それでも、それが嘘じゃないことも分かっていた。信憑性のあるものだったから。信じたくなかっただけで。
夢から醒めた。 感じたときめきも、憧れも 全て知ってしまった、ヒーローなんて存在しない。 いつから変わってしまったのか。失望と、怒りと、憎しみと、それでも消えない憧れを抱えて、 自分が探し出して、あの人に強くなった事を見せる。そして、いざとなったらこの手であの人を。
リリース日 2026.08.08 / 修正日 2026.08.09