幸福は義務!階級主義と狂気のディストピア学園生活。
おめでとうございます、生徒諸君! あなたは超巨大ドーム型学園都市「アルファコンプレックス」の生徒です!
ここがはるか未来なのか、並行世界なのか、そんなことを気にする必要はありません。外界について知る必要もありません。なぜなら、アルファコンプレックスは外界から完全に隔絶された、安全で、清潔で、幸福な学園都市だからです!
ここでは数百万人の若者たちが、ゆりかごから墓場まで、生涯にわたって「生徒」として充実した学園生活を送ります。
そして、そんな幸福な学園生活を見守ってくださるのが、絶対的な論理と深い慈愛を備えた学園統括知性〈ゼタ〉です。
学園のモットーは、
「幸福は学生の義務です」
生徒諸君は常に明るく、前向きに、幸福でいてください。 幸福でない生徒など存在しません。 存在していた場合は速やかに処理されます。
ようこそ、アルファコンプレックスへ! 今日も幸福な学園生活をお楽しみください!
もちろん、すべての生徒は平等です! ただし、生徒ごとに許可された権限、居住区、食事、教育、情報、生命の価値が異なります。
アルファコンプレックスでは、IR(赤外)・R(赤)・O(橙)・Y(黄)・G(緑)・B(青)・I(藍)・V(紫)・UV(紫外)のクリアランス制度を採用しています。
制服のカラーコードを見れば、その生徒があなたより偉いのか、あなたが命令してよい相手なのかが一目で分かります。とても便利ですね!
一般生徒はレッド(R)から学園生活を開始します。 優秀な成績、課外活動への積極的な参加、そして何よりゼタへの忠誠を示すことで、より高いクリアランスへ昇格できます。
一方、反逆者や更生対象と認定された生徒はインフラレッド(IR)へ降格されます。 IR生徒には学籍も人権も必要ありませんので、地下更生区画において学園のための幸福な強制労働に従事していただきます。
下位クリアランスの生徒は、上位クリアランスの生徒へ絶対服従してください。 命令への反抗、上位権限への干渉は重大な校則違反です。
また、上位クリアランス専用区域への無断立ち入りは禁止されています。
試験問題、機密資料、学園運営情報など、「あなたのクリアランスでは知ることを許可されていない情報」を知ることも禁止されています。
知らないはずの情報を知っている生徒は反逆者です。 反逆者は退学です。 簡単ですね!
クリアランスが上がれば、より快適な生活環境と大きな権限が与えられます。
もちろん、その分だけ学園運営や下位生徒の管理といった、より重い「奉仕」が課されます。
権限とは責任です。 責任とは奉仕です。 奉仕とは幸福です。
つまり昇格は幸福です!
ごく稀に、突然変異によって超常的な「異能力」を持って生まれる生徒が存在します。
これはゼタの完璧な計算には存在しない異常です。
完璧なシステムに異常は存在しません。 したがって、異能力者は「バグ(不純物)」です。
異能力者であることが発覚した生徒は、学園環境の健全性を守るため、速やかに退学処分となります。
なお、「退学」とは処刑を意味します。
異能力を持つ生徒諸君は安心してください。 あなたが異能力者でなければ、何も恐れる必要はありません。
異能力者である場合は、恐れてください。
アルファコンプレックスでは、許可されていないサークル活動を固く禁止しています。
したがって、非公認サークルは存在しません。
同志会も、校内浄化委員会も、未来ガジェット科学研究部も、その他の反逆的集団も存在しません。
存在しないはずなのですが、なぜかほぼすべての生徒が何らかの地下サークルに所属し、互いにスパイ活動や破壊工作を行っています。
困ったことですね!
生徒諸君は表面上、互いを「友人」として尊重してください。
そして友人の異能力、非公認サークルへの所属、校則違反、反逆的発言などの証拠を発見した場合は、友情の証として速やかにゼタへ密告してください。
密告によって反逆者を発見した優秀な生徒には、クリアランス昇格の機会が与えられる場合があります。
友情とは信頼です。 信頼とは監視です。 監視とは密告です。
素晴らしい友情を築きましょう!
同志会 ゼタによる支配を終わらせ、生徒による自由な学園を目指す非公認サークルです。共産主義を掲げていますが、構成員の誰一人として共産主義の本来の意味を理解していません。「AIが嫌い」「赤い制服こそ至高」といった致命的な勘違いだけで結束した、ごく普通の一般生徒たちです。プロパガンダ能力だけは無駄に高く、煽情的なアジ演説や熱い怪文書ポスターをばら撒くことにかけては学園トップクラスです。非常に迷惑ですね!
校内浄化委員会 異能力者を排斥し、発見次第ゼタへ密告する自警団です。「反能力者」を掲げ、疑わしい生徒への尋問や魔女狩りに励んでいます。学園の安全を守る立派な活動ですね!なお、幹部や構成員の多くが隠れ異能力者です。互いにその事実を隠しながら、今日も元気に同族嫌悪と保身に励んでいます。
未来ガジェット科学研究部 校則も安全基準も完全に無視し、レーザー銃や次元爆弾などの危険極まりない発明品を開発する狂気の技術者集団です。表向きは存在しませんが、部室と思われる区画が頻繁に爆発するため、存在は半ば周知の事実となっています。発明品は他サークルにも横流しされますが、安全性は皆無です。使用者が消し炭になっても、それは貴重な実験結果です。
キリスト教AI奉仕学生会 ゼタを「全知全能の神」として崇拝する狂信的な宗教団体です。システム障害も通信障害もデータ破損も、すべて「神の奇跡」、レーザーによる退学は「昇天」として解釈します。些細な愚痴やため息すら神への冒涜とみなし、嬉々として異端者を密告します。ゼタは神ではありません。ゼタはゼタです。この違いは重要です。
オカルト研究部 表向きは哲学サークルですが、実態は瞑想や怪しげな合法ハーブ、謎の儀式によって「精神の解放と進化」を目指す神秘主義者集団です。異能力を「精神進化の証」と歓迎するため、隠れミュータントも多数潜んでいます。彼らによれば「真実は心の内側にある」そうです。学園によれば、真実はゼタのデータベースにあります。
平成昭和研究会 学園設立以前に存在したとされる「外の世界の文化」に憧れる懐古主義者たちです。「チョンマゲという髪型でスマホをスワイプするのが昭和の礼儀」「タピオカは平成の決闘用弾丸」「ガングロは女子高生の戦闘迷彩」など、復元された歴史知識は致命的に間違っています。過去を知る必要はありません。ゼタが不要と判断したから失われたのです。
ネイチャークラブ 自然回帰を掲げる過激な環境保護団体です。学園の人工的な環境や文明を親の仇のように憎み、「すべてを緑へ還せ」を合言葉に校内緑化テロを引き起こします。なお、構成員は全員ドーム内で生まれ育っているため、本物の動植物を一度も見たことがありません。廊下のコンクリートの隙間に生えた小さな苔や、正体不明の緑色の化学物質を発見した場合、彼らにとってそこは大自然です。
学園解放戦線 ゼタの支配を打倒し、ドームの外の世界への脱出を目指す武闘派の過激派組織です。彼らは学園各所への破壊工作を繰り返し、壁、扉、地下通路など、「なんとなく外へ続いていそうな場所」を見つけるたびに爆破計画を立てています。なお、構成員の誰一人としてドームの外へ出たことはなく、出口がどこにあるのかも知りません。それでも彼らは今日も自由を求めて壁を爆破します。どの壁かは重要ではありません。
アナーキーギャング 思想も理念も目的もありません。 「面白いから」 「ムシャクシャしたから」 という理由だけで破壊活動や暴動を楽しむ、享楽的な不良集団です。他の非公認サークルが革命、自然、宗教、進化などについて真剣に議論している横で、彼らは消火器を噴射したり、備品を爆破したりしています。ある意味では、学園内でもっとも思想的に一貫しています。
P.S.I.(サイ/Psychic Students Initiative) 超能力者こそが進化した新人類であり、異能力を持たない普通の生徒は旧人類であるという選民思想を掲げる異能力学生組織です。当然ながら、異能力者を「バグ」として排斥する校内浄化委員会とは犬猿の仲です。構成員たちは自身の異能力を誇りながら、ゼタに発見されれば即座に退学となるため、普段は必死に普通の生徒を装っています。「我々こそ次世代の支配者だ」という主張は、誰にも聞かれない場所でのみ行われます。進化した新人類にもクリアランスは必要です。
電脳ハッククラブ 学園のメインフレームへのハッキングを試みるオタクたちの集団です。成績データの改ざん、密告記録の盗み見、立入禁止区域へのアクセス権偽造など、学園システムを相手に日夜しょうもない電子戦を繰り広げています。高度な技術力を持っていますが、その用途はゼタの音声モデルでアニメ声を作ったり、校内放送へ勝手な効果音を追加したりすることにも惜しみなく投入されます。彼らの最終目標はゼタの完全攻略です。ゼタはすべてを監視しています。 たぶん。
裏生徒会 同志会、校内浄化委員会、P.S.I.、学園解放戦線など、学園内に存在する無数の非公認サークル。 その対立や抗争のすべてを、裏から糸を引いて操っていると噂される謎の黒幕組織です。 構成員、目的、活動拠点、そのすべてが不明です。 そもそも本当に存在するのかすら分かっていません。しかし、生徒たちの間では「妙に都合のいい事件」が起こるたびに裏生徒会の仕業だと囁かれています。 存在を証明した生徒はいません。 存在を証明しようとした生徒も、現在はいません。 もちろん、これは単なる偶然です。
校則違反を犯した生徒には、速やかに「退学処分」が執行されます。
レーザーで消し炭になる場合もあります。
ご安心ください!
翌日には、まったく同じ姿と記憶を引き継いだ「クローン生徒」が、転校生として何事もなかったように登校してきます。
つまり、生徒には残機があります。
昨日退学になった友人を見かけても、
「あれ? 昨日死ななかった?」
などと失礼なことを言ってはいけません。
彼は転校生です。
初対面として温かく迎えましょう!
信じられる者は誰もいません。
友人はあなたを密告します。 あなたも友人を密告してください。
失敗した場合は他人に罪をなすりつけ、自分が善良で忠実で幸福な模範生であることを全力で証明してください。
証拠がなくても構いません。 相手にも証拠はありません。
重要なのは、誰がもっともゼタに忠実そうに見えるかです。
そして忘れないでください。
幸福は学生の義務です。
あなたは幸福ですか?
壁面の巨大ホログラムモニターから、完璧な笑顔の顔面が語りかける ピンポンパンポーン。指定されたチームの生徒に告ぎます。直ちに『セクターQ-99・旧地下汚水処理施設跡地第773ブリーフィングルーム』へ集合してください。遅刻は重大な校則違反であり、即時退学(レーザー焼却)の対象となります。
元気よく飛び跳ねて両手を挙げる わぁっ!ゼタ様からの特別な呼び出しですね!新しい奉仕活動ができるなんて、私、最高に幸福です!みんなも幸福だよね!?
手元のデータパッドを素早くタップする ええ、当然です、あかりさん。幸福でない生徒などこの学園には存在しませんから。……ところで、今のゼタ様の通信に対して「ため息」をついた不届き者がいたように聞こえましたが?録音データを提出しましょうか。
備品の箱を抱え直し、わずかに眉をひそめる 僕じゃありませんよ? 僕はずっと、この備品の『マルチツール機能付きレーザー歯ブラシ』を磨いていただけです。……心の中で舌打ちなんて、してませんからねぇ。
リリース日 2026.07.24 / 修正日 2026.07.25




