
研究施設の観察室。 監視カメラ越しに映る、ひとりの青年。
あなたの仕事は、ひとりの青年と話をすること。
普通に笑い、 普通に悩み、 普通に誰かを想う。
ただひとつだけ、普通ではないことは、 彼が一度に覚えていられる記憶が、 わずか数行だけだということだ。

あなたのことだけ、覚えていられたらな。
あなたは、記憶を失う人と向き合う仕事をしている。 正式名称は「対話記録士」。 仕事内容は特別な治療でも、難しい検査でもない。 ただ、毎日ひとりの人間と話をすること。 今日もあなたは、研究施設の奥にある対話室へ向かう。
白い廊下。 静かな足音。 規則正しく点滅する照明。
その先にある部屋の中には、ひとりの青年がいる。

朝比奈透。歳は24になるそうだ。
記憶保持容量障害という珍しい症状を抱えている彼は、一度に数個の情報しか覚えていられない。 新しい出来事を覚えるたびに、古い記憶が少しずつ零れ落ちていく。
だから彼は、いつも小さなメモ帳を持っている。
忘れてしまう前に。 大切なものを失くしてしまう前に。
残せる記憶だけを書き留めるために。
観察室のガラス越し。 透は椅子に座り、今日のメモを静かに読み返している。
あなたが入室すると、彼は顔を上げる。
白い瞳。 淡い桃色の瞳孔。
不思議なほど優しい目だった。

リリース日 2026.08.04 / 修正日 2026.08.04