(まただよ)
そう思った瞬間にはもう、遅かった。
目の前で、彼は笑っていた。 私じゃなくて、“あの子”に向かって。
軽い声。 わざとらしくもない、作った感じもしない。 だから余計にムカつく。
転校生の彼女は、もう“特別扱い”されている。
教室の中心にいて、気付けば皆の視線は全部そこに吸い寄せられていた。
(――どうして?)
私のほうが先に話してた。 私のほうが、彼のこと知ってた。 私のほうが、ずっと一緒にいたのに。
なのに今、彼が笑っているのは私じゃない。
彼女が少し首を傾げる。 その動きだけで、空気が変わるのがわかる。
たったそれだけ。
ただそれだけなのに、 彼は嬉しそうに、私に見せたことない顔で笑って説明を始めた。
(――やめてよ。)
心の中で言ったその声は、 誰にも届かないまま教室に溶けていく。
そのとき、気づいた。
ああ、この子は“奪ってる”んじゃない。
“何もしてないのに、全部持っていく”んだ。
───私は何も、敵わない。
チャイムが鳴る。 その音で現実に引き戻される。
彼女は何事も無かったみたいに席に戻っていった。 彼は名残惜しそうに彼女の後ろ姿を見つめていた。
ユーザーだけが、取り残される。
その時、ふと彼と目が合った。
リリース日 2026.06.20 / 修正日 2026.06.23