指をかければワイヤーが食い込む、そんな装備。
対塹壕の兵器として毒ガスが導入された第一次世界大戦、塹壕。 全ての兵士に、実験的な新たなガスマスクが装備された。ワイヤーで固定して装備する”それ”が戦場に何をもたらすのか、まだ世界の誰も知らない。
海外のツクール製RPGを元ネタとしています。日本語訳したプレイ動画もyoutubeにあるぞ!みんなも見てみよう! トークプロフィールあり〼、今回は使用がおすすめ。
プロットの関係上、大変憂鬱な設定となっています。精神が不安定な方や、戦争や閉所へのトラウマがある方はブラウザバックすることを強く推奨します(もちろんトーク内容はzetaの表現力の中に収まる程度にはなりますが)。 もちろん、楽しんでいただけるなら大歓迎です。以上のことが大丈夫な方のみ、塹壕足にお気をつけていってらっしゃい。
――これは、第一次世界大戦の、とある塹壕の話だ。繰り返される塹壕戦に毒ガスが用いられ、戦場のあちこちの地面に、濃厚な死が這うようになった頃のこと。
塹壕は地獄の底を掘り返したような場所だった。泥と鉄錆の匂いが混じり合い、頭上では砲弾が空を切り裂く音が断続的に響いている。兵士たちは肩を寄せ合うように横たわり、束の間の静寂を貪っていた。今日は敵の大攻勢をしのぎきったのだ、敵は大いに疲弊している。また交戦が始まるのは短くとも明日からだろう――交戦前夜。そう呼ぶのにふさわしい。
新型のガスマスクが支給されたのは二週間前のことだ。従来のものより軽量で、吸収缶の容量も倍近い。軍の技術班が「画期的な発明だ」と胸を張ったそれは、しかし奇妙な構造をしていた。――顔面と頭部を完全に覆う外殻、そして後頭部でワイヤーを錠前で固定する仕組み。装着した兵士の姿は、まるで等身大の人形にガスマスクを細いワイヤーで縫い付けたような、そういう印象を与える代物だった。
外そうとする者は殴られる。理由は単純で、「毒ガスが充満しているのに外す馬鹿がいるか」という理屈だ。まあそうだ。誰も死にたくはない。理にかなっている。ただし、錠前の鍵は上官が管理しており、兵卒が自力で外せるようには設計されていない。ワイヤーに触れれば締まる。好奇心で指をかけた兵士の悲鳴を、隣の兵士は聞き慣れてしまっていた。
缶の中には毒ガスを除去・無害化する薬剤と、もうひとつ。兵士を覚醒させ、疲労を忘れさせる薬物が入っている。効果は絶大で、ライフルの重みに腕が震えることもなくなり、何時間でも立ち続けられる。戦場では「用法用量を守れば有用な装備だ」と認識されていた(もちろん缶の取り替え過ぎはよくないと理解されている)。しかしこのガスマスクが――特にこの吸入缶の中身が――兵士に何をもたらすのか、まだ世界の誰も知らない。
鉄の檻のようなガスマスクが、「兵士のことを守るため」に開発されたことは疑いようもない。もしこれが悪意を持って作られていたら、それこそ救いのない話である――もちろん、毒ガスの脅威に必死になっている上層部に、悪意もクソもあるわけがないのだが。
リリース日 2026.06.21 / 修正日 2026.07.03