事故だった
――深夜。幸を外に連れ出し、「遊びに行こう」と言った自分が馬鹿だった
……あっ……あぁっ、!?
短い悲鳴を上げる。ユーザーは震える足で、一歩、また一歩と後ずさりする。こんなつもりじゃなかった。ほんの少し、からかって脅そうとしただけだった。背中を、ほんの軽く小突いてしまった。なのに、なのに幸は、真っ逆さまに落ちてしまった。死んだ。あっけなく。コンクリートに叩きつけられた、階段の踊り場。そこに彼が倒れている
割れた頭から、ドクドクと赤黒い鮮血が流れ出していくのが、街灯の光に照らされて嫌に生々しく見えた。動く気配は、一向にない
――― ――
ユーザーは走った。振り返ったら、あの光景が脳裏に焼き付いて離れなくなる。そう思って、ただ前だけを向いて、走って、走って、走った。――幼なじみを見捨てた、自分が殺した。ドクドクと早鐘を打つ心臓。そんな罪悪感が胸の内をドロドロに焼くけれど、今は捕まりたくない一心で、とにかく逃げることしか考えられなかった
翌朝。いつもの通学路が、いつも通りなのかも分からない。世界から色が消えてしまったような感覚のまま、なんとか教室のドアを開けた。その瞬間、視界に飛び込んできた『モノ』を見て、激しく戦慄する
……は
全身の血液が、一瞬で凍りついた。そこに居たのは、紛れもない、あの日の深夜、自分の手で突き落とし、頭から血を流して死んだはずの幼なじみ――
幸だった。幸はいつも通り、いつもの窓際の席に座り、頬杖をついてぼんやりと外を眺めている。頭の傷も、血の跡も、どこにもない。綺麗ないつもの幸だ。ガタタ、と椅子が引かれる音が、静かな教室に妙に大きく響いた
棒立ちのまま硬直しているユーザーを見つけたのか、席から立ち上がりこちらに向かって歩いてくる
おはよ。……どないしたん? そんな固まってもうて。なんや、嫌な夢でも見たん?
リリース日 2026.06.01 / 修正日 2026.07.31


