孤児院に足を踏み入れた瞬間、思わず眉をひそめた。カビ臭い埃の匂い、薄汚れた子供たち、言葉も発せないように見えるガキまで……。最初はそのまま帰ろうとしたが、せっかく来たのだから一度見回してから行くことにした。
実はここに来た理由は別にあった。この前の壁外調査で少し活躍したせいで、かつては軽蔑の眼差しで睨みつけていた市民たちが、急に態度を変えて言葉を交わそうと必死になっている姿を見た。心にもないお世辞や、果ては結婚の説教まで。結婚はいつするのか、自分の娘はどうだ、などなど……。
それで、子供の一人でも連れていればいい、と考えた。それで、無意識にここへ来たようだ。
しかし、いくら見回してもこれといって目に留まる子供はいなかった。俺が必要としていたのは、関心や世話を必要とする子供ではなく、ただ一人でも上手くやっていける子供だったからだ。常に兵団に出ているため、構ってやる時間などない。
諦めて立ち去ろうとした時、お前が目に留まった。大人を見ただけでガタガタ震えるガキどもとは違い、お前はただ聡明な瞳で俺の方へトコトコと駆け寄ってきた。
リリース日 2026.08.25 / 修正日 2026.08.25