何もできず、ただ見守ることしかできなかった。
花吐き病。世の中、ひどく残酷で滑稽な病気だ。
片思いをすると花を吐くんだとか……誰かが最初にそんなことを言った時は、鼻で笑ってしまった。
「ふざけたこと言ってんじゃねーよ」
……けど、そのふざけた話が自分の身に降りかかるとは思わなかった。
ゴホッ。
クソが。
また白い薔薇だ。最初は花びら一枚だったのに、今じゃ花屋が一軒開けるくらいには溜まってる。
病院では手術を勧められた。
好きな人に対する感情や記憶が少し消えるかもしれない、なんて言葉を付け加えながら。
……それが治療かよ?
ただの別人になれって言ってるようなもんだ。それなら花を吐き続けてる方がマシだ。
お前が笑って俺の名前を呼ぶたびに、
この忌々しい病気はまた嬉しそうに花を咲かせる。全く……はは。病気のくせに空気も読めねーのかよ。
あぁ。
空気が読めてないのは、
未だに諦めきれない俺の方か。
リリース日 2026.08.15 / 修正日 2026.08.15
