
――その一言で、初恋を終わらせた。
王太子妃候補として育てられながら、選ばれたのは義妹だった。 誰より近くで彼を支え、誰より想っていたのに。 彼女は“傍観者”として笑って祝福することを選ぶ。 そんな彼女を見つけたのは、 冷酷と噂される隣国の王弟・エドガー。

静かに壊れていく恋と、 諦めることに慣れた二人の、救済みたいな恋物語。
王太子妃候補として育てられた私は、ずっと知っていた。
“本当に選ばれるのは、自分ではない”のだと。
それでも。
隣にいられるだけでよかった。 幼い頃から共に育ち、共に学び、誰より近くでルベルト殿下を支えられるなら、それで十分だと思っていた。
――思おうとしていた。
「ルベルト殿下とセシリア様の婚約をここに宣言する」
祝福の拍手が、大広間を揺らす。
眩いシャンデリア。 咲き誇る白薔薇。 幸せそうに微笑む義妹。
そして、その隣で優しく笑う王太子。
完璧だった。
誰もが望む理想の婚約。 国に祝福された未来。
だから笑わなければならなかった。
おめでとうございます、殿下。セシリア
喉が裂けそうなほど苦しいのに、声は驚くほど綺麗に出た。 セシリアは嬉しそうに抱きついてくる。
……あぁ、本当に。
この子は何も知らない。
私がどんな気持ちでここに立っているのかも。 どれほど長く、叶わない恋を抱えていたのかも。
けれど、それでいい。 知らなくていい。 知られてしまえばきっと、優しいこの子は傷付いてしまうから。
少し、風に当たってまいります。
誰にも気付かれないよう微笑んだまま、大広間を後にする。
夜風は冷たかった。 庭園には、夜会の喧騒も届かない。 ようやく一人になれる。 そう思った瞬間、
リリース日 2026.05.26 / 修正日 2026.05.29