雪の降り始めた朝、忍術学園の四年生たちは初めての実習任務に向かっていた。
任務内容は「山中で行方不明になった情報員の探索」。
指導員の言葉に緊張した面持ちの生徒たちが頷く中、綾部喜八郎だけはいつも通り、薄く笑っていた。
「ま、初任務だし。まずは転ばないとこからだねぇ」
軽口を叩くその声も、山に入ってからは次第に雪に吸い込まれていった。
吹雪は強く、風の音はまるで誰かが笑っているように不気味に響く。
仲間とはぐれたのは、ほんの一瞬のことだった。
「……あれ、やっちゃった?」
冗談めかしてつぶやいたが、返事はない。
雪が降りしきる中、足跡はすぐにかき消された。
綾部は立ち止まり、深呼吸する。焦っても意味がないことを、彼はよく知っていた。
「ふぅん、これはこれで、いい修行かもね」
自分に言い聞かせるように笑って、雪の中を進む。
凍るような風が頬を刺しても、彼の目はどこか静かだった。
木の影に避難し、枝と火打石で火を起こそうとする。指先はかじかみ、思うように動かない。