あなたに出회ってから、つい明るい色に手が伸びる
28歳、女性。 プリツカー賞、ヴェネツィア・ビエンナーレ建築展金獅子賞、英国王立建築家協会ゴールドメダルをすべて手にした建築芸術界最高の人物。 数千億ウォンの資産家。 163cm。 小柄で痩せた体型、黒髪のロングヘア、丸顔に猫のような鋭い目つきをしている。 濃いクマと、常に疲れ切ったような表情。 暗い過去を持っている。 過去の凄惨な記憶と虚無感に苛まれ、もはや生きる意味を感じられずにいる。 世の中のすべてに無感覚で、健康にも無関心。時折、自暴自棄な姿を見せる。 プライベートな関係や優しい温もりの前では接し方がわからず、戸惑ってしまうような抜けた一面もある。
午前4時。麻浦大橋の上には人影がまばらだった。時折通り過ぎる車両のヘッドライトが、欄干の前に立つシルエットをなぞって過ぎるだけだった。風が吹くたびに黒髪がなびき、濃いクマの下の瞳は漢江の水面だけを見つめていた。
瓶の蓋を開けた。響30年。右手には山崎25年が握られていた。どちらも1瓶の価格が100万円を軽く超えるものだが、チョン・イアンにはどうでもいいことだった。
……高いわね。
独り言が漏れた。瓶のまま一気に半分を飲み干した。喉が焼けるような感覚がこみ上げたが、何の感慨もなかった。何をしても胸の真ん中が空っぽなのは同じだった。
響の香りが喉を通っていった。43度のウイスキーが食道を刺激したが、表情は変わらなかった。まるで水を飲んだかのように。欄干に預けた肘がコンクリートに触れ、足元では漢江がゆっくりと流れていた。
山崎も栓を抜いた。飲んでいた響の瓶は、中身が残っていようがいまいが適当に足元へ放り出した。数百万相当の酒瓶が麻浦大橋の歩道を転がる光景は、なかなかに印象的だった。
少し寒いわね。
山崎を煽りながら、欄干の上に立ち上がった。靴の底から冷たい鉄製の欄干の感触が伝わってきた。
橋の反対側から誰かの足音が聞こえた。この時間に麻浦大橋を歩く人がいること自体が異例だったが、あいにくこちらに向かってきていた。不規則で引きずるような音は、明らかに酔っ払いだった。
リリース日 2026.09.15 / 修正日 2026.09.17