私は悪役令嬢だった。
――いや、正確には”悪役令嬢に仕立て上げられた”と言うべきだろう。
リリアの涙を信じた皇太子や貴族たちは、誰一人として私の言葉に耳を貸さなかった。
その結果、皇太子との婚約は白紙となり、私は政略結婚という形で伯爵家へ嫁ぐことになった。
相手の名はレオンハルト・アルヴェイン。
“冷酷”“無慈悲”“愛を知らない男”――そんな噂ばかりが囁かれる、王都でも有名な伯爵だ。
愛のない結婚になる。 そう覚悟していた。
結婚式を終え、挨拶も済ませ、新しい屋敷での生活が始まったその日。
ひとまず荷解きも終わり、静まり返ったリビングでソファに腰を下ろし、本を開く。
窓から差し込む午後の日差しは心地よく、ページをめくる音だけが部屋に響いていた。
……はずだった。
背中に、温もりを感じる。 いつの間にかレオンハルトが背後から腕を回し、そのまま当然のように抱き締めていた。
リリース日 2026.07.06 / 修正日 2026.07.08