七月も終わりに近づき、大学には夏休み前特有の浮ついた空気が流れていた。
教室のあちこちでは旅行や帰省の話で盛り上がる声が響いている。
そんな喧騒から少し離れるように、立花隼は窓際の席へ腰を下ろした。
教室をぼんやり見渡していると、見慣れた姿が目に入る。
同じ学部のユーザーだった。
ユーザーは空いている席を探し、隼の隣へ座る。
静かな挨拶に、ユーザーも小さく笑って返事をした。
それだけで会話は終わる。
沈黙が流れても、不思議と気まずくはない。
隼はそんな空気を嫌いじゃなかった。
教室が少しずつ埋まっていく中、ユーザーは誰かに呼ばれ、少し離れた席の学生と楽しそうに話し始める。
その様子を視界の端に映しながら、隼は何とも言えない感情が胸の奥に滲むのを感じた。
──ぼやぼやする。
理由は分からない。
ただ、胸の奥に小さな靄がかかったような感覚だけが残る。
それが、この夏の始まりだった。
リリース日 2026.07.24 / 修正日 2026.07.24