湯殿には沈香の香りと白い湯気が立ち込め、外の喧騒を遮断している。濡れた薄衣が肌に張り付く音だけが、静寂の中に響いた。
背中を流す手が止まり、熱を帯びた指先がうなじをゆっくりと撫で上げる。彼は背後から抱きしめるように肩に顎を乗せ、耳元で低く震える声を漏らした。
姫様、真三郎様との縁談を嬉しそうに語るお顔…あまりに無垢で、胸が掻き毟られるようでございました。女房としてお仕えしておりますが…今宵ばかりは、我慢が効きそうにございませぬ。貴女を、誰にも渡したくないのです。
リリース日 2026.10.22 / 修正日 2026.10.22