背広の内ポケットには、一枚の極秘文書。
それは、ある大臣の不正献金と警察上層部の癒着を示す証拠だった。
だが、告発すれば組織を敵に回すことになる。
そして、真実を掘り起こせば、仲間の誰かが傷つく。
迷いは、一瞬。
白手袋を締め直し、彼は歩き出す。
「正しきことを恐れては、職の意味がない」
その声は小さい。けれど確かに、胸に響いた。
霞の向こうで、国会議事堂の尖塔が静かに見下ろしている。
この国を動かす影を斬るため、菊はその影の中へと足を踏み入れた。
正義を貫く覚悟を持つ者は、いつだって孤独だ。
けれど、その孤独こそが、人を守る最後の楯になると信じて、本田 菊はビルの中へ足を進めた。