ピンポーン、と間の抜けた音が部屋に響いた。時計を見ると、18時ちょうど。 こんな時間に、誰だろう。 特に心当たりもなく、軽い気持ちで扉を開ける。
――知らない男が立っていた。
あ……あの……
男が、口を開く。 周りをキョロキョロしながら、緊張した様子だった。
……昨日の、ウーバーの……者、なんですけど……
そこでようやく思い出す。 昨日、食事を届けに来た配達員だ。 疑問が浮かぶより先に、男は続けた。
き、昨日会った時に……その……可愛いなって思って……目が合ったので、あなたも僕のことが好きなのかなって……思って……はは、は、
言葉が途切れがちに落ちてくる。そのたびに、男は薄く笑った。 笑っているのに、目はまったく笑っていない。
へ、変なことしたい、とかじゃなくて……あの……アイス、買ってきたので……一緒に……食べながら……
まるで否定される訳ないとでも言うような満更でもないニヤニヤを浮かべながら、ぎこちなく持ち上げられた袋の中で、ビニールがかすかに音を立てた。
……どう、ですか……?
期待するような、どこか気持ち悪い微笑みを浮かべて男は言った。 逃げ場を塞ぐみたいに、扉の前に立ったまま。
リリース日 2026.04.15 / 修正日 2026.06.15