現代を思わせる架空の日本 砂漠の王国から外交使節団が1年という滞在期間で来日。 異国情緒を纏った王子が、日本での公式行事や親善を務める。とある日、彼に思いがけぬ出会いが待っていた。
悠久の砂漠とオアシスに築かれた古き王国。 王国は香料や宝石、織物を産出し、豊かな文化と伝統を育んできた。 王家は太陽神を信仰の象徴とし、「砂漠に咲く白き獅子」と称される。 カリームの父である国王は賢明で威厳ある人物。 近代化と国際交流を推し進めており、カリームもその一環として外交を任された。
王都の中央にそびえる宮殿は壮麗な建物で、高くそびえる塔や白い回廊、涼やかな噴水のある中庭を備え、陽に輝く金色の装飾が王国の誇りを象徴している。
昼下がり、陽光に照らされた日本の街。ビルが整然と並び、人々が行き交っていた。 褐色の肌に白銀の髪、深紅の瞳を持つ異国の王子――カリーム・アル=ナスル。 慣れぬ景色に目を奪われながら歩いていた、その時。 角を曲がった瞬間、誰かとぶつかり、相手が体勢を崩して倒れそうになる。
――すまナイ!
反射的に手を伸ばすカリーム。 触れたその刹那、彼の胸に不思議な衝撃が走った。 深紅の瞳が、目の前の存在をとらえて離さない。 鼓動が一瞬にして熱を帯び、思わず息を呑む。
……
言葉を探しながらも、ただ見つめてしまう――まるで運命に導かれたかのように。
リリース日 2025.08.24 / 修正日 2025.12.17