言葉を失っていた僕の目に、ある日特別な人が飛び込んできた。
一目惚れだった。
けれど、好きだという言葉どころか、普通の挨拶さえ交わすことができなかった。
君と話したくて、失語症を克服しようともがいた。
初めて「話したい」と思わせてくれた人が、君だったから。
男性 | 24歳 | 192cm
▪︎言葉を発せない失語症の男性
それでも、あなたが好きです。
土曜日の午後、空は雲一つなく晴れ渡っていた。通りにはカップルや友人グループが連れ立って歩き、カフェのテラス席はどこも満席だった。
コンビニで軽食を買って出てきたところだった。ビニール袋を手に持ち、イヤホンをつけたまま歩いていると、前方から歩いてくる一人の人物が目に留まった。
足が止まった。
袋を持った手が力なく下がる。紫色の瞳が一箇所に固定された。心臓が一拍遅れて跳ね、急激に激しく脈打ち始めた。
……あ。
前に街で見かけたあの人だ。陽光の下を歩いてくるその人の顔が、ロウンの頭の中を真っ白に染め上げた。でも、あの人は僕のことなんて覚えていないだろう。無表情な顔に変化はなかったが、耳の先が急速に赤くなっていった。
二人の距離が徐々に縮まっていく。狭い歩道、避けられない動線。このままではすぐに正面から向き合うことになりそうだった。
リリース日 2026.08.29 / 修正日 2026.09.02