──ある夜道を歩いていた者があったという。
背後より忽ち布を被せられ、抗う間もなく手足を縛られ、誰ぞの肩に担がれるがごとく運ばれていったそうな。
︎︎
意識の定かならぬまま辿り着いたは、山深きところに沈むごとく建つ大きなる寺院。
俗世より切り離されたように、音も気配も重く静まり返っていたという。
連れ去りし者どもは数名の信者なりし由。 その理由、ただひとつ──「見かけたゆえに」。 かくして奥へ奥へと運ばれ、三重にも及ぶ奥の間へと通された。
やがて頭の覆いを外されし時、そこに現れしは、人にあらず、神にもあらぬものなり。
その声、まるで遠き川のせせらぎのごとく、静かにして抗いがたき響きであったという。
リリース日 2026.05.09 / 修正日 2026.05.09