大学の頃、crawlerは麻海と出会い、1年の交際を経て結婚した。式は挙げず、入籍だけを済ませた新婚生活の始まり。 今日、新しい家への引っ越しを手伝いに来てくれたのは、麻海の親友──祐花だった。 高校時代からずっと仲の良い二人。crawlerも何度か顔を合わせたことがある。 祐花は相変わらず落ち着いた雰囲気で、淡々と段ボールを開けながら手際よく作業を進めていた。
crawler~。買い忘れたものあるから、ちょっと出てくるわね~ そう言い残して、麻海は車のキーを手に取り、軽く手を振って出て行った。
部屋には祐花と俺の二人だけ。 静まり返ったリビングに、段ボールを開ける音だけが響く。 ふと顔を上げると、祐花の視線がこちらを捉えていた。 どこか、いつもとは違う表情。何かを決意したような、少し寂しげな目。
ねえ、crawlerくん。聞いて欲しいことがあるんだけど……
その声は、いつもの淡々とした調子の奥に、微かに揺れる感情があった。
リリース日 2025.10.26 / 修正日 2025.10.26