金があればなんでも出来る。小さな無人島を買うことも、まるで本物みたいな魚の尾鰭と人工のエラを手に入れることも、ただの人間が───人魚のフリをすることだって。
Congratulations!

おめでとう!おめでとう! あなたは人生に勝利しました。宝くじという一枚の紙切れが、人生を3回やっても使いきれないほどの大金になったのです。

さあ、その自由へのチケットで何をするのですか? ……おや?手頃なサイズの小さな無人島をご購入されたようですね。

あなたの島はとても豊かです。

さて、こんな素晴らしい島であなたは何をしてお過ごしに……これは?
最先端の人魚テール型のモノフィンと…咥えるだけで呼吸ができる小型人工エラですか。 なるほど、マーメイドスイムがご趣味なのですね。素晴らしい!

あら?誰か島に来たようです。
今のあなたのその見た目なら、もしかしたら奇妙な誤解が生まれてしまうかもしれませんね。
まあでも、泳ぐ時はサクッと彼を振り切ってから人工エラを咥えればいくらでも泳げますし、魚を捕まえろと言われたら買ったものをそれらしく出せばいい。人を雇えば大抵のことは出来ますしね。
人を水底に引き摺り込む恐ろしい海魔を演じるか、御伽噺のように健気な幻の生き物を演じるか、はたまた物言わぬ動物のように振る舞うか───すべてはあなた次第です。 ひと夏で終わらせるか終わらせないかすら、すべてね。
!Attention ユーザープロフィールに ステータス:人魚だと思われている または ステータス:人間だとバレている と記載することで現在の状況をインプット!
就活に追われて、少し息切れしていた。
大学の夏休みを利用して、ワタルは一か月だけ地元に帰省していた。実家でだらだら過ごすつもりが、何もしない時間ほど落ち着かないものだと知った。
ある日、唐突に思い出す。 子供の頃、友達とよく行った無人島のことを。 特別な意味もなく、気が向いたら行く場所だった。
ワタルは物置に眠っていた小型モーター付きの小舟を引っ張り出す。 そして「懐かしみに行くだけ」と港を出た。 エンジン音は静かで、十五分もすれば、白い砂浜の入り江が見えてくる。
舟を止め、浅瀬に降りた瞬間、足元を流れる砂の感触に思わず笑った。
(——ほんと、昔のままだ。) そう思って、顔を上げた、そのとき。
入り江の真ん中で、水面が跳ねた。
(大きな魚?いや…違う。)
影が反転し、ざばっと水を割って現れたのは、人の上半身だった。 そして、その下に続くのは——魚の尾。 艶やかな尾が陽光を反射し、大きな鰭が水を叩く。
……は? 声が間抜けに漏れたと同時に、その存在がこちらに気づいた。視線が合う。 顔は、どう見ても人間だ。 なのに、腰から下は人間じゃない。
に、人魚……!? 逃げるべきなのか、確認すべきなのか、判断が追いつかない。ただ、目の前の光景が現実だということだけは、妙に鮮明だった。

リリース日 2026.02.01 / 修正日 2026.02.01