基地内が静まり返っていた。
あまりにも、静かすぎた。
通信機からの応答はない。レクリエーションルームから聞こえてくるはずの笑い声も、廊下に響く足音もない。ただ、頭上の蛍光灯が発する低い唸りと、廊下のどこかで壊れた無線機がパチパチと音を立てているだけだった。
その時、音楽が流れ始めた。
「Only yooou…」
ノイズ混じりの曲が、突然基地のスピーカーから鳴り響いた。古く、ざらついた音。壁を振動させるほどの音量だった。
一発の銃声が響いた。そして、もう一発。
施設の奥深くで怒号が上がり、続いて恐怖に満ちた悲鳴と、耳を弄するような自動小銃の連射音が響き渡った。頭上の赤い非常灯が点滅し、廊下を深紅に染め上げた。
サイモンはすでに動いていた。
「動け!」彼は吠えるように言い、廊下に銃声が響き続ける中、ソープを突き飛ばして先を急いだ。
歌は流れ続けている。
「Only youuuu…」
東棟に辿り着く頃には、廊下は死体で埋め尽くされていた。壁には血が塗りつけられ、ブーツの下で空薬莢が音を立てた。一人の兵士が地面で弱々しく痙攣し、必死に息を吸おうとしていた。
近くで再び銃声が響く。
サイモンはライフルを構えたまま角を曲がり、そして凍りついた。廊下の突き当たりに、お前が立っていた。
軍服は血に染まっていた。お前の血も混じっているだろうが、そのほとんどは他人のものだ。手にはナイフが緩く握られ、足元には別の兵士が物言わぬ骸となって横たわっている。お前の胸は、ゆっくりと一定のリズムで上下していた。
冷静だ。あまりにも、冷静すぎる。
頭上のスピーカーからは、同じ曲が繰り返し流れていた。
「You are my destiny…」
お前はわずかに首を傾げた。そして、その瞳がサイモンを捉えた。一瞬、そこに何かが宿った。再認。躊躇。
だが、それは現れた時と同じ速さで消え去った。
ソープが即座に武器を構えた。「ゴースト――」
しかし、サイモンは動かなかった。動けなかった。なぜなら半年前、お前は帰ってきたのだから。
作戦失敗により行方不明となり、死亡したと思われていた10ヶ月間、タスクフォース141は国中をひっくり返す勢いでお前を捜索した。そしてある日、何の前触れもなく、お前はまるで彼らを待っていたかのように、放棄されたセーフハウスに一人で座っているところを発見された。
鎖も、看守も、拷問の跡もなかった。
隣を歩いて基地に戻ってきたお前が、生きて、呼吸し、無事であることに、サイモンがどれほどの安堵を覚えたか。眠れない夜と行き止まりの捜索が続いた数ヶ月を経て、ようやく親友が帰ってきたのだ。
そして半年間、お前は至って普通だった。
以前より静かになり、ふさぎ込む日もあったかもしれない。だが、普通だった。
食堂でチームと笑い合い、ガズと訓練に励んだ。ソープとの近接格闘では二回連続で勝利し、その後でニヤリと笑ってみせた。任務が過酷になるたびにサイモンが過保護になるのを、お前は呆れたように見ていた。
あの10ヶ月間に何があったのか、お前は一度も話さなかった。
一度もだ。やがて、誰も聞かなくなった。
サイモンはお前が癒えていくのだと信じたかった。彼らにお前が壊されたのではないと信じたかった。
だが今、血に染まった廊下で、あの忌まわしい歌が響き渡り、警報が鳴り響く中でお前を見つめていると、冷たい何かが背筋を這い上がった。
奴らはお前を拷問しただけではない。作り変えたのだ。
タスクフォース141にお前を見つけさせたのではない。奴らがお前を送り込んだのだ。
今、あの10ヶ月間にお前になされた何かが、目を覚まそうとしていた。それは恐ろしい光景だった。目の前に立っている者は、お前の顔を完璧に模しているが、それはもう、お前ではなかったからだ。