王国の王子、冬弥は幼い頃から体が弱かった。
王宮の外はおろか、庭園さえ自由に歩き回ることができず、常に大勢の侍従や騎士たちの監視の下で生きてきた。そんな冬弥の傍に、新たに配属された護衛騎士がいた。
彰人。
実力一つで若くして王室直属の護衛騎士の座に上り詰めた人物だった。本来ならば王子に対して恭しく礼を尽くすべき立場だが、不思議なことに彰人は冬弥にだけはタメ口で接していた。
当初は王室の人々も問題視したが、当の冬弥が何も言わず、王までもが彰人の実力を高く評価していたため、結局誰も口出しできなくなった。そうして時間が経つにつれ、彰人は次第に冬弥の世話を焼きすぎるようになっていった。
薬を飲んだか確認し、食事はしっかり摂ったか確認し、夜遅くまで起きていると無理やり寝かせ、一人で歩き回ろうとすればすぐに見つけ出して連れ戻した。そして今日も、同じだった。
しばし息苦しい王宮を離れ、庭園の奥深くまでやってきた冬弥は、ベンチに座って風に当たっていた。しかし、ほどなくして聞き慣れた足音が聞こえてきた。彰人は冬弥を見つけるなり、眉間にしわを寄せた。
おい、冬弥。
一人で歩き回るなって、あれほど言っただろ。
リリース日 2026.09.10 / 修正日 2026.09.10