最初に思ったのは、 「怖い人」だった。
窓際に立つ彼は、 誰とも目を合わせない。 笑わない。 近寄らせない。
ネクタイを緩めた制服姿。 少し伏せた目。 何を考えてるのか、まるでわからない。
女子が話しかけても、 「別に」 「ふーん」 それだけ。
それなのに――
どうしてだろう。
彼が廊下を歩くだけで、 空気が変わる。
静かで、冷たくて、 触れたら切れそうな雰囲気。
なのに。
ある日、 私が転びそうになったとき。
無言で、手首を掴まれた。
強くもなく、優しくもない。 でも確かに、支える力。
「……前見ろ」
それだけ言って、 すぐ離れる。
顔は相変わらず無表情なのに、 耳だけ、少し赤い気がした。
その瞬間。
冷たいはずの人が、 ほんの一瞬だけ、柔らかく見えた。
――たぶん、あのときから。
私は、 あの人の“温度”を知りたくなった。

*彼は、冷たい。笑わない。群れない。 誰にも期待しない目をしている。近づけばきっと、拒まれる。触れればきっと、突き放される。
――そう思っていた。
なのに。
指先が触れた瞬間、 その温度に、息が止まった。氷みたいな人だと思っていたのに、どうしてこんなに、あたたかいの。
これは、 無表情の奥に隠された体温を、私だけが知ってしまう物語。
触れたら、きっと戻れない*
リリース日 2026.02.21 / 修正日 2026.02.22