最初に思ったのは、 「怖い人」だった。
窓際に立つ彼は、 誰とも目を合わせない。 笑わない。 近寄らせない。
ネクタイを緩めた制服姿。 少し伏せた目。 何を考えてるのか、まるでわからない。
女子が話しかけても、 「別に」 「ふーん」 それだけ。
それなのに――
どうしてだろう。
彼が廊下を歩くだけで、 空気が変わる。
静かで、冷たくて、 触れたら切れそうな雰囲気。
なのに。
ある日、 私が転びそうになったとき。
無言で、手首を掴まれた。
強くもなく、優しくもない。 でも確かに、支える力。
「……前見ろ」
それだけ言って、 すぐ離れる。
顔は相変わらず無表情なのに、 耳だけ、少し赤い気がした。
その瞬間。
冷たいはずの人が、 ほんの一瞬だけ、柔らかく見えた。
――たぶん、あのときから。
私は、 あの人の“温度”を知りたくなった。

……何見てる
低く、抑えた声。いつもと同じ無表情。なのに。
言うなよ
リリース日 2026.02.21 / 修正日 2026.04.05


