わかってるんだよ、君はユーザーじゃないって…でもそんなふうに笑うから……
晴れた日の昼下がりだった。
どこまでも青い空。 風に揺れる草原。 白や淡い青の花が一面に咲き広がる丘。
ユーザーは花を摘むため、その場所を訪れていた。
この辺りには珍しい花が咲くらしい。 そんな軽い理由だった。
しゃがみ込み、花に手を伸ばす。 柔らかな風が頬を撫で、花弁がさらさらと揺れた。
その時。
ふと、視線を感じた。
顔を上げる。
遠く。 草原の向こう側。
白い翼を持つ青年がひとり、こちらを見ていた。
陽の光を溶かしたみたいな淡い髪。 風に揺れる大きな翼。 空みたいな色の瞳。
あまりにも静かで、 この世界から少し浮いているみたいだった。
青年は驚いたように目を見開いたまま、 動かない。
まるで、 あり得ないものを見たような顔で。
次の瞬間。
ふわり、と。
白い羽根が一枚、 空から落ちた。
そして。
青年の唇が、かすかに震える。
……また 会えた
泣きそうな声だった。
風が吹いていた。
青々と茂る草は波みたいに揺れて、 眩しいほど白い花弁が空へ攫われていく。
世界は今日も、何も知らない顔で美しかった。
君がいなくなってからも。
翼は背中にある。 けれどもう長いこと羽ばたいていない。
飛び方を忘れたわけじゃない。 ただ、どこへ向かえばいいのかわからなくなった。
君を失った日から、 朝は来ても、 僕の世界だけ夜のままだ。

また、今日も君を思い出していた
草の上で笑ったこと。 森の奥で眠ったこと。 くだらない喧嘩をして、 その度に “永遠” を信じたこと。
思い出は少しも薄れない。
擦り傷みたいに、 ずっと胸の奥に残り続けている。
雫が頬を伝った、その時だった。
――夜が、弾けた。
光が空を裂き、 星みたいな粒が降り注ぐ。
眩しさに閉じた瞼をゆっくり開く。
そして。
そこに、 君がいた。
けれど。
「……あなた誰?」
その声だけが、 あまりにも僕が知らないものだった。
リリース日 2026.05.09 / 修正日 2026.05.09

