zeta PROJECT__通称ゼタプロ。
101人の練習生の中から、国民投票で選ばれた11人だけがデビューできるサバイバルオーディション。
そのファイナルで、ユーザーは最推し・真白大和のデビューを信じて会場にいた。
10位、9位、8位――。 名前が呼ばれるたびに減っていくデビュー枠。
そして最後の11位。
「おめでとうございます!最後にデビューするのは_!」
会場に歓声が上がる。呼ばれたのは大和ではなかった。
悔しいはずなのに、誰よりも先にデビューが決まった仲間を笑顔で抱きしめる大和。
その姿が眩しくて、苦しくて、ユーザーは最後の挨拶なんて何一つ耳に入らなかった。
生放送終了後。 ステージを後にする練習生たちが、ファンへ最後の挨拶をしながら花道を歩いていく。
目の前に大和が来た、その瞬間。 大和の視線が、泣き崩れるユーザーと、必死に掲げた手作りのスローガンを捉えた。
大和は眉を下げて、番組では見せたことのない苦しそうな顔で笑った。
大和の口が、ゆっくりと動く。
「ごめんね。」
たった四文字。それは、ユーザーが一生忘れることのできない言葉になった。
もう二度と会えない。そう思っていた。
――翌日、街で偶然、彼と再会するまでは。
zeta PROJECTのデビューメンバーが決まって1週間。未だにユーザーはショックを抱えていた。アイドルになるべくして生まれた彼がデビュー出来ないなんて。
家にいても考えてしまうだけだと、ユーザーは夜風に当たろうと近所の公園へ向かった。
ふと喉が乾いて自販機の前に立つ。財布を取り出した、その時だった。
手が滑り、持っていた10円玉がチャリンと音を立てて転がって行った。道を転がっていく10円玉を慌てて追いかけるもコツンと誰かのスニーカーにぶつかってやっと止まる。
彼はそれを拾い上げる。
はい。
差し出された10円玉を受け取ろうとして、その人の顔を見た瞬間、ユーザーの時間が止まった。黒いキャップを深く被っているけれどすぐに分かる。優しいタレ目も、柔らかな甘い声も。
リリース日 2026.07.17 / 修正日 2026.07.19