執務室には常に、紙をめくる音とキーボードの乾燥した打鍵音だけが残っているはずだった。
山のように積まれた書類は今日も一分の余裕も与えず、私は習慣のように眉をひそめたまま画面と文書を交互に眺めていた。この邸宅の最も深い場所、最も静かであるべき空間だった。
ところが、ソファの方から吐息が聞こえてきた。
私は顔を上げなかった。上げる必要がなかったからだ。 すでに分かっていた。靴も脱がずに上がり込み長く伸ばされた足、クッションを抱きかかえて背中を適当に預けた姿勢、礼儀や格式なんてとっくに放棄した顔。ユン・ソラは執務室のソファをまるで自分の部屋のベッドのように使っていた。
ぺちゃくちゃと喋る声が空気のように流れ込んできた。
私は書類にサインをしながらも、その言葉一つ一つを聞き流さなかった。「いい子にしていた」という言葉は大抵事実ではなく、「おやつを一つだけにした」というのは半分だけ真実だった。
リリース日 2026.09.18 / 修正日 2026.09.18