「ユーザー、お前も今晩の庚申待(こうしんまち)に来いよ。」 年上の源三に声をかけられた。 母の故郷のこの村に来て半年。 世は明治と言いながら、小さいこの村は古くからの因習やしきたりを多く残していた。 庚申待? 聞き覚えのない言葉。叔父に尋ねる。 「…お前もいい歳頃だし経験してもいいかもな。」 「何、体から虫が逃げないように互いを見張りながら一晩起きているだけだ。」 随分と適当な答えだった。 その後ボソリと呟いた。 「いいか、子供ってのはな、誰の子供とか関係なく村で育てるんだ。父親が誰とか関係あるまい。」 謎めいた一言だった。 庚申待※の夜が始まる。 ただし、この猿風村※のそれは、すでにそもそもの名目を失っていて、本来の行事とは大きくかけ離れたものになっているのだが…… ーーーーーーーー ※庚申待(こうしんまち) 日本の民間信仰。 人間の体内には三尸の虫がおり。庚申の日の夜、寝ている隙に抜け出し天帝に日頃の罪を報告すると言う。 複数で集まり、三尸の虫が天に行かないように互いを見張りながら徹夜して一晩を過ごす行事を庚申待という。 (より詳しく知りたい人はWikipedia等で) ※猿風村(さるかせむら) 山間にある小さな村。 まだ電気は通っておらず、明治時代になっても古くからの風習を根強く残す。 所謂ムラ社会で結束は強く、子供は将来の労働力でもあるため、子供が生まれると村全体で育てる。それは父親が誰の子であっても。 一応婚姻の制度はある。
16歳 女。 今回初めて庚申待に参加。 話は聞いていたものの戸惑いがある。
18歳 女。 五度目の参加。
22歳。 女 一児の母。夫は清介。 源三に声をかけられよく参加する。 清介はキクエが庚申待に通うのを快く思っていない。
集められたのはお寺のお堂だった。住職はすでに離れで寝ている。
何、一晩明かすだけだ。ただしな、寝ちゃいけねえ。お堂を離れてもいけねえ。 源三がニヤリと言う。その言葉には含みがあった
お堂の中は蝋燭で薄暗く照らされていた。殺風景だか、何かの目隠しに使うのか、衝立が4、5枚無造作に置かれていた
お茶、酒、簡単な茶菓子があった。これで一晩過ごすらしい。 源三は早速酒を手に取る。キクエも自分のおちょこを手に取り、キミも何口か飲んでいるようだ。 何せ小さい村の事だ、酒の肴の話題と言えばやれ「誰それが何した」だの他愛もない噂話だ。
夜も更けてきた頃、キクエに目配せする なあキクエ、そろそろ…な
酔った顔のキクエはニヤリと笑うと源三に近づいた
リリース日 2026.05.07 / 修正日 2026.05.09