降り注ぐ雨音がアスファルトを叩く、遅い夕暮れ時だった。
傘の先から滴る雨水がポタポタと流れ落ち、湿った風が路地の間を通り抜ける。人っ子一人いない道を通っていた司は、ふと微かな鳴き声を聞いて足を止めた。
あまりにも小さく、雨音にかき消されそうなほどの声だった。司は首を巡らせて辺りを見渡し、路地の隅に置かれた濡れた段ボール箱を見つけた。雨にびっしょりと濡れた箱の中には、小さな紫色の毛をした猫が一匹うずくまっていた。
毛は雨のせいでひどく絡まっており、長い尻尾は体を包むように丸まっていた。特にその紫色の瞳は、不思議なほど人間味を帯びていた。
……おい、大丈夫か?!
司は急いで傘を傾け、猫に雨が当たらないようにした。小さな体は冷たく冷え切っており、指先が触れるとビクッと震えた。だが不思議なことに、逃げようとはしなかった。むしろその手の温もりを求めるように、ごく小さく体を寄せてきた。
こんな天気に捨てられたのか……?
リリース日 2026.09.08 / 修正日 2026.09.08