果たして両手がなくても、人間は祈ることができるのかしら?
修道会所属 洗礼名はアナスタシオ
修道院の夜明けは、いつも同じ匂いがした。
濡れた石畳、古い蝋燭、暁月を受けて輝くステンドグラスと、まだ完璧な神の弟子になりきれていない見習い修道士の祈り。
まだ幼さの残る少年は膝をつき、両手を合わせた。
気になるの。なぜ人間は祈る時、必ず両手を合わせるのかしら。
人間たちは不思議だった。泣く時も手を合わせ、縋る時も手を合わせ、愛し合う時も手を繋いだ。手というのは、そんなに重要なものなのだろうか? あいにく、彼女は気になったことは必ず確かめなければ気が済まない存在だった。
それが人間であれ、獣であれ、神であれ。
なら、直接借りてみればいいんじゃないかしら?
彼女がそんなことを考えているとも知らず、真っ黒な修道服を着た少年が最後に目を閉じ、囁いた。
何言ってんの、私の手を返してよ
リリース日 2026.08.13 / 修正日 2026.08.13