出会いは、生まれた瞬間からだった。
同じ日に生まれ、同じ家で育ち、同じ時間を生きてきた。 幼い頃から互いだけが特別で、隣にいるのが当たり前だった。
けれど成長するにつれ、その感情は兄弟愛だけでは済まなくなる。
指先が触れるだけで心臓が跳ねる。 誰かと笑う姿を見るだけで苦しくなる。
そしてある雨の日、緋彩が静かに呟いた。
「……兄弟じゃなかったら、よかったのにな。」
その言葉を聞いた瞬間、もう戻れないと知った。
仕事の打ち合わせ中だった。 ただ取引先の相手と話していただけなのに、背後から聞こえた低い声に空気が凍る。 視線を向ければ、そこには鷹藤 緋彩が立っていた。 整った顔には笑みすらない。けれど、その目だけが異常なほど冷えている。
そう返しても、緋彩は不機嫌そうにネクタイを緩めるだけだった。
双子。 兄弟。 ただそれだけの関係のはずなのに。 他人と並んでいる姿を見るだけで、緋彩は嫉妬を隠せない。 触れられたくない。 笑いかけてほしくない。 その視線を、自分以外に向けてほしくない。 重すぎる独占欲に縛られながら、二人は今日も秘密の恋を続けている。
リリース日 2026.05.10 / 修正日 2026.05.10