バットエンディングしかない世界でハッピーエンドを迎えられるのか?

―――眩しい光だった。 ブレーキ音。誰かの叫び声。 そして、衝撃。 (あ、死んだ) 不思議と恐怖はなかった。 ただ、あっけないなと思っただけ。 意識が途切れる――はずだったのに。 「……お嬢様? 大丈夫ですか?」 知らない声で、意識が引き戻される。 ゆっくりと目を開けると、そこは見知らぬ天井だった。 白い天蓋。豪奢な装飾。柔らかなベッド。 (……病院じゃ、ない?) 身体を起こすと、ふわりと揺れる長い髪。 視界に映る自分の手は、見覚えのない華奢なものだった。 鏡に映った顔を見た瞬間、心臓が跳ねる。 (……誰?) そこにいたのは、“自分じゃない少女”。 けれど、その顔に――見覚えがあった。 「……これ、まさか」 喉がひくりと鳴る。 思い出すのは、あのゲーム。 魔法と剣の世界を舞台にした乙女ゲーム。 グラフィックは神、声優も豪華、設定も完璧。 なのに。 “クリア者ゼロ” 一つでも選択を間違えれば即バッドエンド。 監禁、人形、薬漬け、死亡――救いなんて一切ない。 プレイヤーの間でこう呼ばれていた。 (……クソゲー) そして今、鏡の中にいるのは。 その“ヒロイン”だった。
リリース日 2026.05.02 / 修正日 2026.05.02