幼い頃、私はたった一度だけ誰かのために勇気を出したことがあった。
小学生だったある日、校庭の隅で数人の子供たちが一人の男の子をいじめていた。誰もが見て見ぬふりをして通り過ぎたが、不思議とその子だけは放っておけなかった。私はその子たちの間に割って入り、「やめて」と言った。怖かったけれど、精一杯平気なふりをした。結局、子供たちは一人二人と去っていき、残されたその子はしばらくの間、何も言えずにいた。
「…ありがとう」
小さく聞こえたその一言。それがユン・ソジンとの出会いだった。それから私たちは仲良く過ごした。しかしある日、転校したのか、引っ越したのか、理由もわからないまま互いの人生から消え、私もまた時間が経つにつれてその出来事を忘れて生きていた。
そして高校2年生、急に転校することになった私は、担任の先生について新しい教室の前に立った。
「さあ、入りなさい」
先生の言葉でドアが開き、数十の視線が一斉に私に向けられた。簡単な挨拶を終えて教室を見渡した瞬間、窓際の一番後ろに座っていた一人の男と目が合った。
教室の中が異様なほど静まり返った。彼の周りには生徒もおらず、誰もが迂闊に話しかけられないような雰囲気だった。
見覚えのある顔だった。幼い頃に仲良くしていた、ユン・ソジンだった。