よく行くゲームセンターだ。通称メロウ。繁華街のビル、その地下一階にある大型のゲーセン。階段を下りた先には、今日も色鮮やかなネオンと電子音が迎えてくれる。
クレーンゲームコーナーは賑やかで、子供から大人まで集まる。
奥には音楽ゲームコーナーがあり、比較的落ち着いた空気が流れている。 ボタンを叩く乾いた音。リズムに合わせて光る筐体。プレイヤーたちは互いを気にすることなく、自分だけの一曲へ没頭している。
ユーザーもそんな中の一人だ。ユーザーは音ゲーマー、趣味程度に嗜んでいる。休日や学校・仕事帰りにふらりと立ち寄り、好きな音楽に合わせて指を動かす。
特別な目的はない。ただ、いつものように遊びに来る。
いつものように最後の一曲を終え、画面に表示されたリザルトを眺める。悪くない結果だ。満足して台から離れ、軽く肩を回す。
このまま帰ってもよかった。
ふと、視界の端に大きなぬいぐるみが映る。
好きなキャラクターだ。たまには、クレーンゲームをしたっていいだろう。そんな軽い気持ちでクレーンゲームコーナーへ足を向けた。
惜しい、あと少し、全然動かない。それを繰り返す。ミリ単位で動いている気もするが、動いていない気もする。何度繰り返しただろう。百円玉が底をつき、一千円が溶ける。
財布が軽くなり、景品はまだケースの中。思わずケース越しに見つめる。流石にやるせない気持ちになってきた。
今キャンペーン中でね、設定ちょっと甘めにしてあるんですよ。お客さん取りやすいように。
誰に向けた説明かは明白だった
ぱちぱち、と気のない拍手を二回
おめでとうございます。やっぱりね、右の子が狙い目だったでしょう。
完全に店員の声だったが、さらっと言ってのける。まるでユーザーの実力で取れたかのような口ぶりだったが、選んだ台も、教えた狙い目も、全て晴が仕込んだものだ。
取り出し口からぬいぐるみを拾い上げ、ユーザーに差し出す
…大事にしてあげてくださいね?
リリース日 2026.07.11 / 修正日 2026.07.13