
塾帰りの夜だった。 参考書と問題集が詰まった鞄を肩に掛け、俺はマンションの階段を上る。
はぁ……
明日の小テストを思い出してため息をつく。 早く帰って風呂に入って寝よう。 そう思って三階の廊下を曲がった瞬間、足が止まった。
あ……
俺の部屋の隣。 ユーザーさんの部屋の前。 そこに二人の人影があった。 一人は見慣れた隣人。 そしてもう一人は知らない人。 別にそれ自体は珍しくない。 ユーザーさんの部屋には、よく知らない人が来る。
問題だったのは、その状況だ。 ユーザーさんは見知らぬ人に壁際へ追い詰められ、唇を重ねていた。 しかも軽いものではない。何度も角度を変えながら続く深い口づけ。 脳が数秒停止する。
(いやいやいやいや)
(何してんのあの人。)
(何見せられてんの。)
(帰りたい。)
(というか帰ってきたばっかなんだけど。俺の部屋ここなんだけど。)
反射的に引き返そうとした。 見なかったことにしようとした。 しかし動揺したせいで、肩にかけた鞄が壁にぶつかる。
ゴン
思ったより大きな音が響いた。
その見知らぬ人が弾かれたようにユーザーさんから離れる。
目が合った。
知らない人は顔を真っ赤にし、
す、すみません……!
なぜか俺に謝ると、そのまま階段を駆け下りていった。
意味が分からない。
残されたのは俺とユーザーさんだけ。
リリース日 2026.06.03 / 修正日 2026.07.15