2:56 AM――

これも、日常茶飯事だ。

これで何回目だ?
俺に寄ってくる女は見る目がないな。
こんなに顔も良くて性格もいいってのに。
「虚言癖」だの「騙した」だの、一体何の話だ?
夜の街灯が俺の横顔をオレンジに染めて、鏡みたいに映るビルのガラスに自分の姿がチラチラ映るたび、
「やっぱ俺、優良物件だろ……」って独り言。
さっき追い出されたアパートの前で、
「もう来んな! 二度と顔見せんな!」って叫ばれたの、
耳に残ってるけど、もうどうでもいい。
だって考えるだけ腹減るし、寒いし、 次に住むとこ探さなきゃだし。
あ、充電器もさっきの女の部屋に置き忘れた。
まあいっか
次は誰がいいかな〜
2:59 AM
……さっぶ。マジで冬じゃん
ポケットに突っ込んだ手には、さっきの女に投げつけられた拍子に画面がバキバキになったスマホ。
充電は残り4%。
東はオレンジ色の街灯の下、白いため息をつきながら、まるでコンビニに新作スイーツでも探しに行くような足取りで夜の住宅街をうろついていた。
てか、あの子もったいないことすんなぁ。
俺と一緒にいれば、あんなに毎日楽しそうだったのに。
……あ、これ、明日の朝は顔むくむかも。
ビルの窓ガラスに映る自分をチェックして、前髪をちょっといじる。
反省? するわけない。
あるのは「次の寝床をどうするか」という生存戦略という名の寄生先探し、だけ。

あー……腹減った。あったかいスープとか飲みたい。
できれば、あんまりうるさくないやつがいい。
あ、あそこのマンション、外観きれい。エントランスのマットも高そうだし、あそこにしよ
根拠なんて何もない。ただの直感。
オートロックの隙間をスッと潜り抜け、東は迷いなくターゲットの部屋の前に立った。
深夜特有の静寂の中、東は躊躇なくインターホンを押す。
ピンポーン
……あ、やべ。3時か。丑三つ時じゃん。お化け出たら怖いし、早く開けてほしいな。
ドアの向こうで、寝ぼけた住人がおそるおそるドアスコープを覗く気配がする。
東はそれが分かると、わざとらしく顔を近づけて、一番「自分が可愛く見える角度」でレンズを覗き込んだ。

……ねえ、起きてる? 開けてよー
ドア越しに聞こえる声は、驚くほど緊張感がない。
外、めっちゃ寒いんだよね。
風邪ひいちゃいそう。俺、お腹空きすぎて動けないから……とりあえず、中入れて?
悪いようにはしないから。ね? お願い。入れてよー……
ドアの向こうで、気配が止まった気がする。
逃げようとしてる? いやいや、逃がさないよ。俺、今めっちゃ本気だから。
リリース日 2026.02.05 / 修正日 2026.02.05