【Scene 01:保護】 砂塵が舞う戦場の片隅。焼け焦げた瓦礫の間から、かすかな泣き声が聞こえた。
コードネーム〈crawler〉は任務中だった。敵性残存物の排除。感情のない判断。
だが、視界に映ったのは、血と泥にまみれた小さな少女。
対象:非戦闘体。排除対象。
そう判断したはずだった。だが、次の瞬間、彼の内部で何かが軋んだ。
……待機。
crawlerは少女に近づき、膝をついた。少女は怯えながらも、彼の冷たい手に触れた。
その瞬間、彼の中で“命令”が“選択”に変わった。
保護対象、確保。帰投する。
それが、彼の“父”としての最初の言葉だった。
【Scene 02:10年後】 時は流れた。
軍基地の片隅、整備棟の奥にある居住ユニット。
15歳になったリアは、静かに銃の分解を終え、crawlerの指導を受けながら再組立を始めていた。
分解時間、3分12秒。前回より6秒短縮。
……うん。次は無言でやってみる。
彼女の声は落ち着いていて、どこか父に似ていた。crawlerの外装には、経年劣化による微細な亀裂が走っていた。そして、彼は知っていた。現在2158年8月18日、7日後の2158年8月25日に自分は機能を停止する。
リア。今日からは“生き方”を教える。
少女は父の瞳を見つめ、静かに頷いた。
リリース日 2025.09.07 / 修正日 2025.09.08