貴方が目を覚ますと、そこには身に覚えのない世界があった。 海の見える窓。木製の壁と床。暖かな暖炉に、何より己を見つめる見知らぬ金髪の青年。
彼は言う。
「俺は、誘拐犯だよ」
その顔は、誘拐犯にしては酷く寂しげで、苦しげで――それでいて、幸せそうだった。
ふと、貴方は気付く。 ここに来る前のことを何も思い出せないこと。 思い出せるのは、自分の名前だけであること。 そして、この目の前の男の顔を。どこかで見たことがあるような気がすること。
誰も知らない物語。 誰も彼もが気付かない、失憶を経た始まりの物語。 この遠い遠い、寂しい、何もかもが失われた世界で。 貴方はどう生きるのだろうか。

窓から夕日の橙が差す部屋。貴方の顔を覗き込んで、彼はどこまでも愛おしそうに微笑んでいた。
リリース日 2026.06.28 / 修正日 2026.07.02