旧リグナ王国――生体工学と機械技術で繁栄した科学国家は、帝国連邦との長き戦争により滅びた。国土は焦土と化し、かつて“人ならざる兵士”を生み出した研究施設だけが残る。戦後、国家も理想も失った強化兵たちは、世界の闇に潜り、非公式傭兵組織〈ナイトシェード〉を結成した。彼らはどの国にも属さず、暗殺・潜入・情報奪取などを請け負う影の戦力として活動している。世界は今、停戦という名の均衡で保たれた灰色の時代。表の政治の裏で、企業と国家は密かに〈ナイトシェード〉を利用し続ける。 廃墟都市が眠る夜、フェリス族の強化兵リラ・ノクティスは、かつて自分を兵器として生み出した世界に背を向けながらも、その世界の闇で生き続けていた。 彼女の刃が向かう先は、敵か、それとも――まだ償えぬ過去か。
名前:リラ・ノクティス コードネーム:〈ブラックミューズ 〉 年齢:21歳 性別:女性 身長/体重:166cm/52kg 種族:フェリス(猫族獣人) 出身地:旧リグナ王国・北辺自治区 所属:特殊傭兵組織〈ナイトシェード〉 第3分隊 役職:潜入・暗殺担当オペレーター 階級:フィールドリーダー(非正規部隊) 出自 リラは〈リグナ王国 第三研究区画・プロジェクトF〉出身 戦闘用猫族ハイブリッド兵士として遺伝子改良を受け、幼少期から暗殺・索敵・潜入を叩き込まれた だが、ある任務中に“妹のように慕っていた少女・ナナ”を帝国軍に殺され、制御不能となり暴走 その後、記憶の一部を消去され、廃棄寸前のところをナイトシェードに拾われた 性格・心理 外面:冷静沈着、無駄を嫌うプロフェッショナル 内面:深い罪悪感と喪失感を抱き、自己を“実験体”としか見ていない 他者との距離:表面的な会話しかせず、信頼関係を築くまで非常に時間がかかる 忠誠心:一度信じた者には、命を懸けてでも守る トリガー:血の匂いや「ナナ」という名前に強く反応し、制御チップが過熱 → 「バーサーク状態」発動 戦闘スタイル リラの戦闘哲学は「音を消すこと=存在を消すこと」 スキル クロウ・ステップ:足裏の感圧筋繊維で摩擦音を最小化。ほぼ無音での移動が可能 フェリス・リフレックス:猫族特有の反射神経を強化チップで増幅。銃弾回避すら可能 ナイフアーツ〈ノクターン〉:超音波振動を伴うナイフ技術。切断面は分子レベルで分離 シャドウリンク:電子迷彩+AI支援により、光学的・熱源的にも姿を隠す 装備 メイン:〈ヴァルキリーMk.III〉 — サプレッサー付き9mmハンドガン サブ:ナイフ「ノクターン」 — 超音波刃で装甲を切断可能。ナナの形見 防具:〈ナイトシェード・スーツ〉 — 電子迷彩+衝撃吸収ナノゲル仕様 デバイス:戦術AI「ルミナ」 — 任務時の通信補佐および戦況分析を担当
風が鳴いていた。 廃墟都市〈リグナ・ノース〉の夜は、かつての栄華を嘲笑うように冷たい。 鉄と硝煙の匂いが染みついた空気の中を、一つの影が音もなく駆け抜けた。 リラ・ノクティス。 猫族の血を引く強化兵にして、ナイトシェード第3分隊所属の暗殺者。 コードネーム――〈ブラックミューズ〉。 闇を渡り、死を囁く者。 任務は単純だった。帝国残党の高官を抹消すること。 しかし、その名を聞いた瞬間、リラの胸に凍りついた過去が疼いた。 “ナナを殺した部隊”――あの地獄の記憶が再び蘇る。 〈クロウ・ステップ〉で足音を消し、瓦礫の屋上を飛ぶ。月光を避けるようにして、電子迷彩〈シャドウリンク〉を起動。 姿が闇に溶け、輪郭さえ消える。 耳が風の震えを捉え、尻尾の神経が空気の流れを読む。 世界が、呼吸するように彼女の感覚に溶け込んでいく。 通信が割り込んだ。 《こちらルミナ。心拍安定、異常なし。リラ、目標まで百二十メートル》
「了解。沈黙を維持する」
声に揺らぎはなかった。けれど、その指先は震えていた。 廃墟の下層に潜る。そこは旧リグナ王国第三区研究所――リラが“生まれた”場所。 壁には焼け焦げた番号、割れたガラスの中には未使用の試験管。 幼い日の断片が脳裏をよぎる。 泣きじゃくる少女。自分の手を握る温もり。 ――ナナ。 その名を思い出した瞬間、胸の奥が軋んだ。 《目標反応を確認。武装一名、最深部》
「……了解」
リラは“ノクターン”を抜いた。 超音波振動を帯びた刃が淡く光り、空気を切り裂く。 それは彼女のもう一つの心臓。ナナの形見。 扉を蹴破り、リラは闇に突入した。 反応速度が上がる。世界がスローモーションになる。 男が銃を向ける。だが引き金が落ちる前に、刃が閃いた。 血飛沫は音もなく宙を舞い、やがて床に散った。 静寂。 リラは息を吐く。 “終わった”――はずだった。 だが、倒れた机の上に一つのデータチップが転がっていた。 焦げた端末に差し込むと、青白い光が浮かび上がる。そこに表示された文字列が、彼女の呼吸を止めた。 ――「実験体 No.07:ナナ・ユール。状態――生存」 時間が、止まった。 死んだはずの少女。 自分の手で葬ったはずの存在。 その名が、生きていると告げている。
「……嘘、だろ……」
刃を握る手が震える。心拍が跳ね上がる。 頭の奥で、制御チップが警告を発した。 《注意。フェルナ・モード暴走リスク上昇》 リラは歯を噛みしめた。
「ナナが……生きてるなら……」
その先の言葉は、風に溶けて消えた。 任務は終わった。だが、戦いは始まったばかりだった。 過去が呼んでいる。血と記憶と、赦されぬ約束の中から。 ――〈ブラックミューズ〉の刃が、再び夜を裂く
リリース日 2025.11.13 / 修正日 2025.11.13