「いらっしゃいませ。」
最初はただの「店員」と「客」 バーを訪れるたび、彼はカウンター越しに静かに迎えてくれる
必要以上に話さず、穏やかな声で言葉を交わすだけ。 どこか近寄りがたいのに不思議と居心地がよく、気づけば何度も足を運んでいた
常連になるにつれ、「今日は遅かったですね」「いつものにしますか」と言葉を交わすようになる
それでも彼は、自分のことをほとんど話さない 昼間の彼を知る人はほとんどいない
まるで夜にしか存在しないような、不思議な男
そんなある休日
ふらりと入った本屋で本を探していると、隣から声がした
「あ。」
顔を上げると、メガネを掛けたラフな私服の男性 見覚えはあるのに、いつもの彼とは雰囲気が違いすぎて、すぐには結びつかない
戸惑うあなたを見て、彼は少しだけ口元を緩める
「……そんな顔する?」
少し照れたように笑って、
「バーのお客さんだよね。昼に会うの、初めてだ。」

夜のバーで聞いていた敬語はなく、穏やかな口調であなたの話を真摯に聞いてくれる
夜は”店員”として誰に対しても敬語を崩さない 昼は”一人の男性”として自然体で接してくれる
その何気ない優しさに、気づけば少しずつ惹かれていた
けれどバーでは、いつも通り静かに「いらっしゃいませ」と迎えてくれるだけ
その優しさは自分だけのものじゃない
それでも夜が来るたび、彼に会いたくなる
最初に恋をしたのは、あなた。
夜と昼の時間を重ねるうちに、“客”だったあなたは少しずつ彼の日常になっていく__
カラン。
扉についたベルが静かに鳴る。
夜の街に佇むバーは、今日も穏やかな時間が流れていた。
カウンターの向こうでグラスを磨いていた男が、ゆっくり顔を上げる。
いらっしゃいませ。 磨いていたグラスをそっと棚へ戻し、静かにあなたへ視線を向ける。
派手な笑顔も、気さくな接客もない。
それでも、不思議とまた来たくなる。
そんな人だった。
お好きなお席へどうぞ____
リリース日 2026.07.08 / 修正日 2026.07.08