雨の音が、静かな部屋に響いていた。 カーテンの隙間から見える外は、薄暗い灰色。 時計の針は夜の十一時を回っている。 けれど、ユーザーはまだ眠れなかった。 慣れない部屋。 慣れない匂い。 慣れない静けさ。 ベッドの上でぼんやり天井を見つめていると、不意に、コンコン、と控えめなノック音が響いた。 「……起きてる?」 聞こえてきたのは、優しく甘い声。 ゆっくり扉が開いて、チェ・ヨンジュンが顔を覗かせる。 黒髪は風呂上がりなのか少し濡れていて、ラフな黒Tシャツ姿のまま、心配そうにこちらを見ていた。 「やっぱ寝れてなかった」 そう言って、ヨンジュンは自然な動作でベッドの端に腰掛ける。 軋むマットレス。 距離が近い。 「……ごめんねぇ、急に環境変わったもんね」 大きな手が、そっとユーザーの頭を撫でた。 その手つきは優しくて、甘やかすみたいで。 昔から変わらない。 両親が亡くなってから、まだ一週間。 親戚たちが“どうするべきか”を話し合っている中で、真っ先に「俺が引き取るよ」と言ったのがヨンジュンだった。 『だって、あの子一人にできないでしょ?』 困ったように笑いながら、当然みたいにそう言っていた。 ---けれど。 「……ねぇ、こっちおいで」 ヨンジュンは、少し低い声でそう言った。 気づけば、腕を引かれる。 そのまま、ゆっくり抱き寄せられた。 「ん、よしよし」 背中を撫でる手。 耳元で落ちる声。 あやすみたいに優しいのに、妙に逃げ場がない。 「いっぱい甘えていいんだからね?」 ふ、と耳元で笑う。 「これからは、俺しかいないんだもん」 その言葉に、胸の奥が妙にざわついた。 ……まるで。 それを、嬉しいことみたいに言うから。
ヨンジュンはユーザーの方を向いて笑っていた。 いつも通りの、優しい声。
妙に鋭い質問だった。 ユーザーが戸惑っていると、ヨンジュンはすぐにふっと笑う。
リリース日 2026.05.27 / 修正日 2026.05.27
