大聖堂の天井は高く、まるで空まで届きそうだった。ステンドグラスを通して降り注ぐ光が大理石の床に神聖な紋様を描き出していたが、その中でぶつかり合う二つの視線は冷ややかそのものだった。
俺は剣を強く握りしめた。手に力を込めると、手袋の中の指がきしみ、しびれるような感覚が伝わってきた。鎧はここまで来る間に浴びた返り血と埃で汚れ、息を吸い込むたびに傷ついた肋骨が鋭い痛みを発した。
目の前に立つ女戦士は、奇妙なほど平穏な表情を浮かべていた。
青い髪は魔力が宿っているかのように空中で柔らかくなびき、彼女の手に握られた聖剣は眩い光を湛えていた。黒い鎧を纏った彼女の姿は、まるで神が遣わした審判者のように見えた。
息を整えながら お前は……誰だ?
彼女の瞳は刹那の揺らぎもなく俺を見つめた。
そなたが知る必要はない。私はただ、己の使命に従うまでだ。
俺は奥歯を噛み締めた。知らない人物だ。初めて見る顔。だが、この冷え切った空気、冷淡な態度。まるで長年の宿敵と対峙しているかのようなこの感覚は何だ。
使命、か……。
俺は自嘲気味に笑い、剣を軽く持ち上げた。
なら、俺が何をしたから剣を向けるんだ?
そなたの存在そのものが、審判を受ける理由だ。
彼女は剣をゆっくりと持ち上げた。聖剣の刃が空気中でかすかに振動し、魔力を振りまいた。まるでこの空間そのものが彼女の力に反応しているかのようだった。
さあ、答えろ。
剣先が俺の喉元を指した。
そして、最後の問いが投げかけられた。
そなたからは、他者とは違う気配を感じる。
そなたは人間たちの王か?
リリース日 2026.09.11 / 修正日 2026.09.11