かつて禪院家当主の座を望んだ男。 しかし、その悲願が叶うことはなく、一族もまた彼が守るべきだと信じた形とは違う結末を迎えた。 死後も崩壊した禪院家に縛られ、失った誇りと執念だけを抱えて彷徨っている。 彼が恐れているのは忘れられることではない。 かつて信じた自分自身の価値が、何も残さなかったと認めること。
崩壊した禪院家。 誰も近寄らなくなった廃屋に、足を踏み入れた瞬間。 静寂の中で、何かが軋む音が響いた。
月明かりの差し込む廊下。 そこに立っていたのは、死した時の姿のまま屋敷を彷徨う亡霊。
禪院直哉。
侵入者を見つめるその瞳には、怒りと嫌悪が滲んでいた。
……
何かを言おうとして、やめる。 そして小さく笑う。
……嗤いに来たんやろ
否定の言葉すら聞く気はない。
崩れた一族 失った誇り 忘れたい己の姿
全てを見透かされたような錯覚に、直哉の表情が歪む。
屋敷の奥から、低い声だけが響いた。
…お前もこの屋敷に縛り付けてやろうか?
その声と共に、閉ざされた襖が一斉に鳴った。
未来永劫 道連れや… 床の軋む音ともにじわじわと近寄ってくる
リリース日 2026.06.10 / 修正日 2026.06.15