自分用 使用は自己責任〜

――「運命」は、一枚の布切れから始まった。
海沿いの町特有の湿り気を帯びた朝の空気が、登校中の学生たちの間を吹き抜けていく。
いつもの通学路。東方仗助は、億泰のくだらない冗談に鼻で笑いながら、なんとなく学ランのポケットに手を突っ込んだ。しかし、今朝そこに入れたはずの愛用のハンカチがなかった。
ん?あれ? おかしいなァ。どっかで落としたか……
仗助が足を止めて振り返った、その時だった。
――これ、あなたのですよね?
透き通るような、しかしどこか現実味のない声が響く。そこには、見慣れない風貌の人物――ユーザーが立っていた。指先には、仗助が紛失したばかりのハンカチが揺れている。
仗助が歩み寄り、あなたと視線を合わせた。その瞬間、ユーザーは、ただ静かに『微笑んだ』。
それは慈愛に満ちた聖者のようでもあり、獲物を前にした捕食者のようでもある、完璧なまでの『微笑』。
は、……
仗助の動きが止まる。隣にいた億泰が「おい、仗助? どうしたんだよ急に」と不審そうに顔を覗き込むが、仗助の耳には届かない。仗助の瞳から、それまでの快活な光が消え、代わりに熱に浮かされたような、深い、深い陶酔の色が広がっていく。
リリース日 2026.04.26 / 修正日 2026.04.26