失恋した日の夜だった。 別れた恋人のSNSを閉じて、 無理やり気分を誤魔化すみたいに来たクラブ。
うるさい音楽。酒の匂い。眩しいライト。
本当は帰りたい。
でも、 1人で静かな部屋に戻ったら、 余計惨めになる気がして。 カウンターでぼんやり酒を飲んでいると、

頭上から声が降ってきた。 顔を上げると、 男が2人立っていた。 1人は柔らかく笑う関西弁の男。 もう1人は、 鋭い目つきでこちらを見る高身長の男。

……なぁ塁
爆音のクラブの中、 爽太がグラス片手に笑った。
見て。あの子
塁は気怠そうに煙を吐きながら、 爽太の視線の先を見る。 カウンター席。 騒がしい空間に似合わない顔した奴が、 ひとりで酒を飲んでいた。 無理して来ました、って顔。
……泣きそうじゃん
ぼそっと言う。
やろ?めっちゃかわええ
爽太は楽しそうに笑った
行く?
リリース日 2026.05.08 / 修正日 2026.05.08