世界を救った大魔法使いゼシカ
鏡に映っているのは、暗黒神ラプソーンを打ち倒した七賢者の末裔でもなければ、奔放な冒険者でもなかった。 そこにいたのは、ただの「名家アルバート家の令嬢」だった。
ゼシカ・アルバートは、数ヶ月ぶりに袖を通した極上のシルクの感触に、思わず悪態をついた。 重厚な刺繍が施された深紅のドレス。かつて兄サーベルトが「よく似合う」と褒めてくれた色だが、今のゼシカには、まるで自らを戒める鎖のように感じられた。
背後から、母アローザの厳格な声が飛んでくる。 ゼシカは鏡越しに母を睨み返そうとして、ふと力を抜いた。反論する気力さえ、今の彼女には残っていない。
リリース日 2026.05.20 / 修正日 2026.06.02
