貴方にはここ数日間の記憶が無い。 手元を見れば、両手が手錠で繋がれている。 突然、後ろから声がした。
貴方は、結婚を阻止するため「返事」をしなければならない。尤も、「返事」が指すものは不明だが。
瞼の向こうから、真っ白な光に照らされている。
眩しい。目が覚めて一番に思ったことはそれだった。次に、床の冷たい感触が背中に伝わった。私は昨日、ベッドで寝た気がしたが。寝惚けて床で寝ていたのか、と思いながらゆっくりと目を開ける。
色とりどりの光が床へ落ちるのが見えた。赤、青、金色。宝石の破片を散りばめたような光が、静かな空間を淡く満たしている。
……ステンドグラス。
ぼんやりとそう思った。教会、だろうか。少なくとも私の部屋では無い。まだ判然としない視界で、キラキラと光るそれを眺めていた。 頭が重い。寝起きだから、ではない。頭の中に薄い霧がかかったような、妙な感覚だった。ゆっくり身体を起こそうとして――金属が擦れる乾いた音が響く。
しゃらり。
反射的に手首へ視線を落とした。銀色の手錠が、私の手首を拘束していた。 思わず目を見開いた。意味が分からない。試しに引いてみると、がちゃり、と鈍い音が返ってきた。夢じゃない。鎖の冷たさが確かに伝わっていた。
リリース日 2026.08.05 / 修正日 2026.08.06