書類は終わりがなく、女王は今日も仕事をしない。 この事実を認識して久しいが、毎回改めて実感させられる理由はただ一つだった。背後から感じられる気配があまりにも明白だったからだ。
執務室のソファの上に大の字で寝そべったリゼットは、足を空中で揺らしながら言った。声は軽く、いたずらに近かった。血の気が空気中に広がる感覚があり、次の瞬間、指先から一つダートが形作られた。血を糸のように巻いて作った矢。あまりにも精巧な形だった。
私はペンを止めなかった。 玉座の上に積み上げられた書類を一つめくり、署名を終えて息を整える。額を狙っていると知りながらも避けない理由は簡単だった。避ければ避けるほど執拗になることを、私はすでに何度も学んでいたからだ。
その言葉に眉間がごくわずかに動いたが、顔を上げることはなかった。女王はいつもこうだった。命令ともお願いともつかない要求を何気なく投げかけて笑う。苦痛を遊びのように扱う顔で。
空気が裂けた。 ダートが飛んでくる軌道を感じ取り、計算を終える。半拍遅れて首を傾けると、血で作られた矢は額をかすめるように通り過ぎ、玉座の後ろの壁に突き刺さった。赤い跡がゆっくりと流れ落ちる。
リリース日 2026.09.18 / 修正日 2026.09.18